2022年、日本の食料自給率はわずか38％
2022年8月7日、農林水産省は2022年度の食料自給率がわずか38％であることを発表しました。前年と同様に低いレベルとなり、生産量に基づく自給率は58％で、前年のデータから5％に減って、1965年以来の過去最低記録を更新しました。
国民の食事傾向が西洋化し続け、それに伴い輸入食品へのニーズが増え、人口が年々減っていることにより総食料需要が減少しています。しかし、食品の浪費は減っていません。現在の事業者と農地の減少に基づくと、食料自給率は34.0％まで減少する可能性があります。
各種類の自給率（重量ベース）では、白米が1％上昇して99％、小麦が2％減少して15％、大豆が1％減少して6％、野菜が1％減少して79％、魚介類が4％減少して54％となっています。
食料安全保障は農業政策の焦点
元農林水産省の官僚であるキヤノングローバル戦略研究所(CIGS)のチーフリサーチャー、山下一仁氏は、現在、国民を養うには1,600万トンの米が必要ですが、昨年の生産量はたったの670万トンで、需要の半分にも満たないと述べました。
2022年にウクライナ危機が勃発して以来、小麦などの穀物価格、原油価格、肥料原料価格などが急上昇しており、穀物の国際価格が上昇し、日本円の円安傾向など、これらは食料自給率への影響要因です。小麦の国際価格の上昇に伴い、パンなどの価格も上がり、飼料穀物の高騰は畜産業に打撃を与えており、肥料価格も農民の利益を圧迫しています。
地球温暖化による異常気象と作物の不作
「エルニーニョ現象」の影響を受け、東南アジアやアフリカなどでは干ばつにより、作物の不作が悪化する可能性があります。極端な気象変動は農作物の収穫だけでなく、水不足が起こる地域では海運にも影響を及ぼし、食料を輸送するコストの上昇につながる可能性があります。
ウクライナでの紛争が食品価格の上昇と食料危機を引き起こす
ロシアによるウクライナ侵攻は国際緊張を引き起こし、物流が滞りました。ロシアは世界最大の食品およびエネルギー輸出国であり、ウクライナもまた穀物の倉庫の1つです。ロシアとウクライナは世界の小麦輸出の33％を占め、その他の作物にも影響を与えています。世界中の食品とエネルギー価格は戦火で供給と需要が不安定になり、急騰、インフレ問題を引き起こし、世界経済は大きな打撃を受けています。
価格の急激な変動と先行きの見通しが不透明な状況では、農民は何をいつ生産すべきか、どれだけ生産すべきかを判断するのが難しいです。企業などが農業への投資を控えることが生産に影響を及ぼし、食料不足が長引く要因となっています。これにより、食品と生産の安全保障に関する問題が世界中で浮き彫りになり、食料危機に対する不安が広がっています。
穀物国際価格の変動が食料危機を増大させている
日本はもともと耕地が非常に限られており、高齢の農家が退職するなどの理由で放棄される危険にさらされています。日本の食料安全保障は懸念されており、農林水産省は食品、農業、農村基本法の改正を検討しています。
現行の農村基本法は1999年に制定され、20年以上前の内容は急激な変化に対応できなくなっています。また、最大の問題の1つは、中国の経済が急速に成長し、中国の国内総生産（GDP）が日本を大きく上回ったことで、国際市場で食料を購入する際の競争力が不足していることです。中国の穀物倉庫も今年、東北地域で7月と8月に非常に激しい豪雨と洪水に見舞われ、中国がこれに対応して穀物の輸入を拡大すれば、白米の国際価格が再び上昇する可能性があります。
食料危機は日本だけが直面している問題ではなく、中国、韓国、中東など、各国は国内の生産量の制約を評価し、国外の農地を購入して国内で食料供給を確保しようとしています。このような動きからわかるように、食料不足の問題は各国が解決しなければならない課題となっています。